鞍掛山

 

   

友一人なく/たゞわがほのかにうちのぞみ
かすかなのぞみを托するものは
麻を着/けらをまとひ/汗にまみれた村人たちや
全く見知らぬ人の/その人たちに
たまゆらひらめく        

         〔くらかけ山の雪〕より

 

 

 

             くらかけの雪

          たよりになるのは
          くらかけつづきの雪ばかり
          野はらもはやしも
          ぽしやぽしやしたり黝〔くす〕んだりして
          すこしもあてにならないので
          ほんたうにそんな酵母〔かうぼ〕のふうの
          朧〔おぼろ〕ろなふぶきですけれども
          ほのかなのぞみを送るのは
          くらかけ山の雪ばかり
            (ひとつの古風〔こふう〕な信仰です)

 

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