種山ケ原
 

  

そのとき風がどうと吹いて来て教室のガラス戸はみんながたがた鳴り、学校のうしろの山の萱や栗の木はみんな変に青じろくなってゆれ、教室のなかのこどもは何だかにやっとわらってすこしうごいたやうでした

               「風の又三郎」より

 

あゝ何もかももうみんな透明だ
  雲が風と水と虚空と光と核の塵とでなりたつときに
  風も水も地殻もまたわたくしもそれとひとしく組成され
  じつにわたくしは水や風やそれらの核の一部分で
  それをわたくしが感ずることは
   水や光や風ぜんたいがわたくしなのだ

「種山と種山ケ原」より

    種山ケ原の雲の中で刈った草は
    どごさが置いただが忘れだ 雨ぁふる
                      「牧歌」より

 

春はまだきの朱雲(あけぐも)を
アルペン農の汗に燃し
縄と菩提樹(マダカ)にうちよそい
風とひかりにちかひせり

四月は風のかぐはしく
雲かげ原を超えくれば
雪融けの草をわたる

 

賢治がドボルザークの曲「新世界交響楽」につけた歌詞
曲[種山ヶ原]より

 
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