月例会4月の予定
「春と修羅」第二集 「九三[ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で]」。
3月からひき続いて、元は一つの心象スケッチである「九三[日脚がぼうとひろがれば]」「九三[ふたりおんなじさういふ奇体な扮装で]」をやります。転生するこの詩を丁寧にみていくと、「春と修羅第二集」の宮沢賢治と心象スケッチの問題点がきっと浮かび上がってくると思います。
この作品「九三」は何といっても先駆形の「曠原淑女」が思い出されます。そして何か胸が温かいもので一杯になります。「曠原淑女」の明るさ爽やかさ、何よりもこの詩には宮沢賢治以外誰も書き得ない言葉が書いてあるのです。
風よたのしいおまえのことばを
もっとはっきり
この人たちにきこえるやうに云ってくれ
(「曠原淑女」より)
風の言葉を聞きとって黒い小さな手帳に書き留める詩人賢治の秘密。その宮沢賢治の風に呼びかける透明な声が、ここには書きとめられています。だから軽やかなこの詩が、思いの外心に深く残り、自然への憧れが沸々と沸き上がってくるのです。
私たちの会報誌10号が出来ましたが、もうご覧になりましたか。あの桜いろの表紙のイラスト(小池潮里さん作)、とても素敵ですね。眺めていると、どんどんもっと素敵になります。そして〈ああ、私も風の言葉を聞き、私の「透明な手帳」にこっそり風の言葉を書きたいなあ〉と、本当に思います。
来月(4月)から、月例会の会場が変わります。新会場は、若宮大路を鎌倉の海に向かってまっすぐ歩き、やどり木の黄金のゴールをくぐってすこし先、あのつめ草の花咲くポラーノの広場のすぐ隣りです。(嘘じゃないです)。4月からそこは癒しと浄化と学びの私たちの拠点になります。本当に「罪や、かなしみでさへそこでは聖くきれいにかゞやいてゐる」場所になるはずなのですから。
文・熊谷えり子